2015.10.14:相続

知人に全財産を遺贈したが受遺者が遺贈を放棄してしまった事例

亡くなったXさんには夫や子はなく、両親も亡くなっていて
絶縁している兄弟や甥姪が12人、その人たちが相続人
という中で一人暮らしをしていました。

Xさんは普段まったく行き来のない兄弟や甥姪よりも
近所に住む大家であるAさんが話し相手になってくれたり、
家のことを手伝ってくれるので、
Aさんに財産をあげたいと思うようになりました。

そこで、Xさんは「全財産をAさんに遺贈します」とする
遺言を公正証書にするため、当事務所を訪れました。

遺言執行者は当事務所がなり、
無事遺言を作ることができました。

1年7か月後Xさんは亡くなりましたが、
Xさんは生前、葬儀は質素に、兄弟や甥姪にも知らせないでほしい
との希望だったのですが、一人の相続人の連絡先は把握していたそうで、
その相続人にだけ連絡をし、少しの預り現金で、
そのまま葬儀までAさんが執り行いました。

Aさんは葬儀の際、その一人の相続人に
遺言の存在を伝えていました。

Aさんはその後兄弟や甥姪の一部から嫌がらせを受けるようになり、
罵声を浴びせられ、夜もろくろく眠れなくなってしまいました。

もともと気が弱いAさんは、もう遺贈を受けるのはいやだ、
ということを当事務所におっしゃり、
遺贈の放棄の手続きをすることになりました。

相続放棄と同様、遺贈の放棄も家庭裁判所へ申述書を提出し、
行うことができましたが、
当事務所としては複雑な思いです。

どこが相続人たちの癇に障ったのか、考えるべきところは
いくつかありますが、
もらえるからと言って遠慮なくもらうのも
どうかということかと思います。

相続は仲良く、読んで字のごとく、お互いに関係を続けていく、
というのが本筋ですね。