自筆証書遺言書保管制度について
令和2年7月10日より、自分で作成した遺言(自筆証書遺言)を法務局で保管してもらう制度がスタートしました。「自筆証書遺言書保管制度」といいます。
令和6年2月までに制度の開始から3年ほどで、累計で69,000件ほどの自筆証書遺言が法務局で保管されています。
遺言者に相続が開始し、相続人等が法務局に保管されている遺言書の写しの交付を求める手続きである「遺言書情報証明書の交付請求」も累計で4,000件を超えました。
手続(業務)別件数(令和6年2月分) (moj.go.jp)
徐々に新しい制度が浸透し、今後より多くの方が、遺言のひとつの選択肢として、自筆証書遺言書保管制度を検討されるようになるのではないかと思われます。
まずは、自筆証書遺言書保管制度の基本について、わかりやすくご案内します。
制度の概要
自筆証書遺言書を作成した本人が法務局に遺言書の保管を申請することができる制度です。保管制度を利用すると、遺言者だけでなく、相続人や受遺者等にもメリットがあります。
保管制度を利用すると・・・
1.遺言書が適正に管理、保管されます。
遺言書は、原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます。原本は遺言者死亡後50年間、画像データについては遺言者死亡後150年間保管されます。
2.相続開始後、家庭裁判所による検認手続きが不要です。
3.相続開始後、相続人等の方々は、法務局において遺言書を閲覧したり,遺言書情報証明書の交付が受けられます。遺言書はデータでも管理されるため、全国どこの法務局でも、データによる遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付が受けられます。
4.法務局から通知が届きます。
相続人のうちのどなたかひとりが遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して、遺言書保管所に遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます(関係遺言者保管通知)。また、遺言者があらかじめ通知を希望している場合、その通知対象とされた方(※)に対して、遺言書保管所において遺言者の死亡の事実が確認できた時に、相続人等の方々の閲覧等を待たずに、遺言書保管所に遺言書が保管されている旨のお知らせが届きます(指定者通知)。
※令和5年10月2日から3名まで指定通知者を指定することが可能となりました。令和5年10月2日までに遺言書保管制度を利用し、指定通知者を1名のみ指定した場合、変更の届出により指定通知者を追加することができます。
★自筆証書遺言作成にあたっては、必ず守らなければならない要件があります。要件や記載上の留意事項につきましては、法務省のホームページ等で充分にあらかじめご確認ください。
ここでは補完制度を利用していた遺言者が亡くなられた場合に、相続人等が行うことになる手続きについてご案内します。
まず、遺言者の方が亡くなった後に,相続人等の方ができることとして、次の3つがあります。
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【1】遺言書情報証明書の交付請求
遺言書情報証明書の交付請求では、遺言書の内容の証明書を取得することができます。
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【2】遺言書保管事実証明書の交付請求
遺言書保管事実証明書の交付請求では、請求者を相続人や受遺者や遺言執行者等とする遺言書が法務局で保管されているかどうかを確認することができます。
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【3】遺言書の閲覧請求
遺言書の閲覧請求では、遺言書の原本あるいはモニターで画像データを見ることができます。
ここでは、保管制度を利用していた遺言者が亡くなられた場合に、相続人等が行うことになる遺言書情報証明書の交付請求について、詳しくご案内します。
【1】遺言書情報証明書の交付請求
法務局から指定者通知が届いた場合や遺言者が保管制度を利用していたことがあらかじめ相続人等に知らされていた場合、遺言書情報証明書の交付を請求します。
遺言者が指定した方への通知(指定者通知)とは・・・
遺言書を保管している法務局は、遺言者があらかじめ希望し、指定していた方に対して、遺言書が保管されていることを通知します。「遺言者が指定した方への通知」という書面が届きます。法務省のホームページ上に通知の見本が掲載されています。
遺言書を作成した方が、生前一切だれにも遺言書を遺していることを伝えていなかったり、一部の相続人にしか伝えていなかった場合、せっかくの遺言が相続人や受遺者等(関係相続人等)に届かないということが起こってしまいます。このような状況を避けるために、「遺言者が指定した方への通知」という制度があります。この通知について詳しく知りたい方は、法務省ホームページをご覧ください。
遺言書情報証明書の交付を請求について
法務局から指定者通知が届いた場合や遺言者が保管制度を利用していたことがあらかじめ相続人等に知らされていた場合、法務局に対して、遺言書の画像情報が印刷された「遺言書情報証明書」の交付を申請することができます。
この遺言書情報証明書を遺言書原本の代わりとして、各種手続きに使用していただくことになります。
※交付請求は、最寄りの遺言書保管場所等、全国どこの遺言書保管所でも手続き可能です。
※交付請求は、郵送でも可能です。遺言書情報証明書の受取も郵送でも可能です。
※相続人等のどなたかが遺言書情報証明書の交付を受けると、その方以外のすべての相続人等に対して遺言書を保管していることが通知されます。これを「関係遺言書保管通知」といいます。
遺言書情報証明書の交付請求の流れ(遺言書保管所に行く場合)
※郵送での交付請求も可能です。
〈ステップ1〉交付請求を行う保管所を決める
全国どこの遺言書保管所でも手続きが可能です。郵送も可能です。
↓
〈ステップ2〉交付請求書を作成する
交付請求書に必要事項を記載します。交付請求書は法務省のホームページからダウンロードすることができます。また、最寄りの法務局でも入手できます。
↓
〈ステップ3〉遺言書保管所の予約をする
必ず予約が必要です。
↓
〈ステップ4〉必要書類を準備して予約した日時に遺言書保管所に行く
書類に不足等があるとその場で証明書の交付を受け取ることができません。
必要な添付書類をあらかじめ確認いただき、不足のないようご準備ください。
手数料納付用紙に収入印紙を貼付して手数料を納付します。
手数料は証明書1通につき1,400円です。
↓
〈ステップ5〉証明書を受け取る
窓口では、顔写真付きの身分証明書で請求者本人であることを確認のうえ、証明書が交付されます。
遺言書情報証明書の交付を請求するときに気をつけること
保管証や遺言者が指定した方への通知だけでは、遺言書の内容を実際に確認することはできません。戸籍謄本等の添付書類を準備していただく必要があります。交付請求をどなたが行うかによって必要となる戸籍謄本等も異なります。詳しくは法務省ホームページをご覧ください。
法務省ホームページに掲載されている記入上の注意事項を参照し、交付請求書に記載漏れがないようご注意ください。
【2】遺言書保管事実証明書の交付請求
亡くなった方が法務局に遺言書を保管していたかもしれない場合、遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます。
この証明書を請求することにより、
請求書に記載した遺言者の遺言書が法務局に保管されているかどうか
請求者が遺言者の相続人でない場合、請求者を受遺者や遺言執行者等とする遺言書が法務局に保管されているかどうか
を確認することができます。
この手続きができるのは、相続人、受遺者、遺言執行者、これらの方の法定代理人等、一定の方に限られます。
遺言書保管事実証明書の交付請求の流れ(遺言書保管所に行く場合)
※郵送での交付請求も可能です。
〈ステップ1〉交付請求を行う保管所を決める
全国どこの遺言書保管所でも手続きが可能です。郵送も可能です。
↓
〈ステップ2〉交付請求書を作成する
交付請求書に必要事項を記載します。交付請求書は法務省のホームページからダウンロードすることができます。また、最寄りの法務局でも入手できます。
↓
〈ステップ3〉遺言書保管所の予約をする
必ず予約が必要です。
↓
〈ステップ4〉必要書類を準備して予約した日時に遺言書保管所に行く
書類に不足等があるとその場で証明書の交付を受け取ることができません。
必要な添付書類をあらかじめ確認いただき、不足のないようご準備ください。
手数料納付用紙に収入印紙を貼付して手数料を納付します。
手数料は証明書1通につき800円です。
↓
〈ステップ5〉証明書を受け取る
窓口では、顔写真付きの身分証明書で請求者本人であることを確認のうえ、証明書が交付されます。
遺言書保管事実証明書の交付を請求するときに気をつけること
遺言書保管事実証明書の交付を請求するときには、請求人の氏名及び住所を確認できる書類として、住民票の写し、住所が記載された法定相続情報一覧図の写し、運転免許証等のコピー等が必要です。運転免許証等のコピーを使った場合に、請求人が原本と相違ない旨と請求に印の氏名を記載する必要があります。
法務省ホームページに掲載されている記入上の注意事項を参照し、交付請求書に記載漏れがないようご注意ください。
【3】遺言書の閲覧請求
遺言書情報証明書の交付請求・遺言書保管事実証明書の交付請求のほかに、相続人等の方は、遺言書の内容を確認するために、遺言書保管書に対して、遺言書の閲覧を請求することができます。
閲覧には、モニター閲覧と原本閲覧があります。モニター閲覧は、モニターにより遺言書の画像データを見る方法で、原本閲覧は遺言書そのもの(原本)を見る方法です。原本閲覧は、原本を保管している遺言書保管所でしかできませんが、モニター閲覧は全国どこの遺言書保管所でも閲覧が可能です。